
マイコンやICを勉強していく中で「フライバック電圧」というワードをよく耳にする。
どんな電圧なんだろう?
こんな疑問を解消します。
私は大学院を修了し、今年の4月から自動車部品メーカーの『電子回路設計の部署』で働いています。
大学時代は情報系専攻だったため、電子回路を基礎から猛勉強しています。
そこで今回は、
フライバック電圧の「発生原理」や「対策」について解説します!
・ どんな場合に発生するか
・ なぜ発生するか
・ フライバック対策の還流ダイオード
・ まとめ
フライバック電圧とは
『フライバック電圧』とは、コイルとスイッチで構成された回路において、スイッチOFF時にコイルに発生する「瞬間的な高電圧」を指します。
「サージ電圧」と呼ばれる事もあり、一般的にはこっちの呼ばれ方が多い気もします。
どんな場合に発生するか
では、フライバック電圧の発生原理をシミュレーションソフトで具体的に見てみましょう!
【回路構成】
NPNトランジスタのベースに電流が流れると、スイッチONとなり10V電源からコイルに電流が流れる仕組みとなっています。
反対として、ベースに電流が流れないと、スイッチOFFとなりコイルに電流が流れません。
【入出力電圧】*vin:スイッチONするための入力電圧、vout:スイッチに出力される電圧
スイッチがオフした瞬間、約400KVの高電圧が発生していることが分かりますね。
(1s、3s、5s、7s、9s)
これが「フライバック電圧」です!
なぜ発生するのか
コイルは、電流が流れていた場合に、急に電流が流れなくなるとそのまま電流を流そうとします。
しかし、スイッチはOFFになると「無限大の抵抗」になります。
「電圧 = 電流×抵抗」であるため、発生電圧も理論上無限大になります。
この高電圧が「フライバック電圧」というわけです。
そのため、スイッチOFF時にスイッチに高電圧(フライバック電圧)が印加されます。
このフライバック電圧がスイッチに印加されると、スイッチ故障の恐れがあります。
そのため、このフライバック電圧を逃がす道を作らなければなりません。
そこで一般的に用いられるのが、「還流ダイオード」です。
フライバック電圧からスイッチを保護するための「還流ダイオード」
「還流ダイオード」はスイッチがオフした瞬間、フライバック電圧を逃がす道を作ることにより、スイッチの故障を防ぎます。
では、具体系に回路で還流ダイオードを実装した場合を見てみましょう!
下図のように、コイルの両端にダイオードを実装するだけです。
【還流ダイオードを実装した回路】
スイッチがOFFした瞬間にコイルから流れる電流が、スイッチではなく還流ダイオードを流れる仕組みとなっています。
【入出力電圧】
*vin:入力電圧、vout:出力電圧
スイッチがオフした瞬間、約400KVのフライバック電圧がかかっていないことが分かりますね!
コイルからの電流がスイッチに流れなくなったためです。
このように、スイッチとコイルの回路を構成をする場合、必ず還流ダイオードのような保護回路を実装しましょう!
まとめ
・ 「フライバック電圧」とは、コイルとスイッチで構成された回路において、スイッチOFF時にコイルに発生する瞬間的な高電圧のことである。
・ フライバック電圧がスイッチに印加されると、スイッチ故障の恐れがある。
・ スイッチとコイルの回路を構成をする場合、還流ダイオードのような保護回路をコイルの両端に実装する必要がある。
いかがでしたでしょうか。
スイッチOFF時は無限大の抵抗になるという点がポイントでした。
この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
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