
電子回路の通信では、反射が起こりやすいらしい。
反射のメカニズムが知りたい。
こんな疑問を解消します。
近年、『電子回路の通信が高速化』してきており、1Mbpsくらいなら当たり前のように使われています。
その結果、電子回路の反射が問題になってきました。
反射のメカニズムを理解するためには、特性インピーダンスの知識が必要です。
そこで今回は、『特性インピーダンスと反射』について解説していきます!
・ 特性インピーダンスの算出例
・ 反射のメカニズム
・ 反射の算出例
・ 反射によるリンギング発生メカニズム
・ 反射によるリンギング発生例
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特性インピーダンスとは
特性インピーダンスとは、『電気信号の波』が伝送線路を伝わる際の『電圧と電流の比率』です。
高速通信のデジタル回路設計を行う場合、必ず覚えなければなりません。
【特性インピーダンスの計算式】
$$ Z0[Ω] = \frac{V}{I} = \sqrt{\frac{Δl}{Δc}} $$
\(Δl \):伝送線路の単位長さあたりのインダクタンス
\(Δc \):伝送線路の単位長さあたりの容量
以上のように、伝送線路の『単位長さあたりのインダクタンス・容量』から、特性インピーダンスを算出します。

高周波の回路は、伝送線路に素子が無限に分布している『分布定数回路』で考えなけばなりません。(⇔集中定数回路)
特性インピーダンスの算出例
上図の場合、伝送線路の特性インピーダンスは下記のように算出できます。
【特性インピーダンスの算出式】
\begin{eqnarray}
Z0 &=& \sqrt{\frac{2.5・10^{-9}}{1・10^{-12}}} \\
\\
&=& 50 [Ω]
\end{eqnarray}
\(Δl = 2.5nH \):伝送線路の単位長さあたりのインダクタンス
\(Δc =1pF \):伝送線路の単位長さあたりの容量

LCRメーター等でインダクタンスと静電容量を測定することにより、特性インピーダンスを算出するこができます。
反射のメカニズム
上図のように、インピーダンス変化点では、反射が発生します。
反射による『電圧・電流の関係式』は、以下の通りです。
【反射による電圧・電流の関係式】
$$ V1 + Vr = V2 $$
$$ Ì1 – Ìr = Ì2 $$
$$ Vr = V1 ・ r $$
$$ Ìr = Ì1 ・ r $$
$$ r = \frac{Z2 – Z1}{Z2 + Z1} $$
\(V1、Ì1 \):入射波
\(Vr、Ìr \):反射波
\(V2、Ì2 \):透過波
\(r \):反射係数
\(Z2、Z1 \):インピーダンス
電圧・電流で反射波の正負が異なるのは『電流のみ向きが存在するため』です。

通常、電圧の向きって考えないですよね。
反射の算出例
上図の場合、どのように反射が発生するか検討してみましょう。
【反射の算出例】
\begin{eqnarray}
r &=& \frac{75 – 50}{75 + 50} \\
\\
&=& 0.2
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
Vr &=& 5・0.2 \\
\\
&=& 1[V]
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
Ìr &=& 100・0.2 \\
\\
&=& 20[mA]
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
V2 &=& 5 + 1 \\
\\
&=& 6[V]
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
Ì2 &=& 100 – 20 \\
\\
&=& 80[mA]
\end{eqnarray}
\(V1 = 5[V] \)
\(Ì1 = 100[mA] \)
\(Z1 = 50[Ω] \)
\(Z2 = 75[Ω] \)

インピーダンス差が大きいほど、反射が大きくなります。
反射によるリンギング発生メカニズム
実際の電子回路では、反射によって『リンギング』が発生することがあります。
反射によるリンギング発生メカニズムについて見ていきましょう。
1.ドライバから信号出力
2.ドライバの出力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスで信号分圧
3.信号がレシーバに到達し、一部が反射
4.レシーバからの反射信号がドライバに到達し、一部が反射
5.3に戻り、信号が0Vになるまで反射を繰り返す

では続いて、実際に数値を入れて計算してみましょう。
反射によるリンギング発生例
上図の場合、リンギングは下記の計算で発生します。
【反射によるリンギング発生例】
1.ドライバから5Vの1ショットパルス出力
2.ドライバの出力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスで信号分圧
\begin{eqnarray}
V &=& 5×\frac{50}{10 + 50} \\
\\
&=& 4.17V
\end{eqnarray}
3.信号がレシーバに到達し、一部が反射
\begin{eqnarray}
V &=& 4.17×\frac{1000 – 50}{1000 + 50} \\
\\
&=& 3.77V
\end{eqnarray}
4.レシーバからの反射信号がドライバに到達し、一部が反射
\begin{eqnarray}
V &=& 3.77×\frac{10 – 50}{10 + 50} \\
\\
&=& -2.51V
\end{eqnarray}
5.3に戻り、信号が0Vになるまで反射を繰り返す

電圧は正負が何度もひっくり返ります。そして、その電圧がレシーバに足されていくのです。
特性インピーダンスと反射まとめ
いかがでしたでしょうか。
回路設計者であれば、『特性インピーダンスと反射』は必ず知っておくべき知識です。
特性インピーダンスと反射についてしっかりと覚えておきましょう。
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