マイコンやICを勉強していく中で「クランプ回路」というワードをよく耳にする。
どんな回路なんだろう?
こんな疑問を解消します。
私は大学院を修了し、大手自動車部品メーカーの『電子回路設計の部署』で働いています。
大学時代は情報系専攻だったため、電子回路を基礎から勉強している最中です。
そこで今回は、『クランプ回路の動作原理・用途』について解説します!
・ ダイオードを2つ使用したクランプ回路の構成と動作原理
・ プラスαの電流制限抵抗
・ アクティブクランプ回路
・ シミュレーションソフト『LTspice』
・ まとめ
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クランプ回路とは?どんな用途で実装される?
クランプ回路とは、『ICやマイコンを過電圧から保護するための回路』です。
具体的な例としては、以下のような場合が挙げられます。
過電圧がマイコンに入力されそうになった際に、その過電圧を一定の電圧にクランプ(固定)することで、過電圧がマイコンに入力されるのを防ぎます。
最も簡単なクランプ回路としては、『ダイオードを2つ使用したクランプ回路』が挙げられます。
それでは『ダイオードを2つ使用したクランプ回路』の構成と動作原理について解説していきます。
ダイオードを2つ使用したクランプ回路の構成と動作原理
下図のように『マイコン端子への信号線を2つのダイオードで挟むだけ』です。
ダイオードの先には、それぞれ「5V電源」と「GND」が接続されています。
【回路構成】
『振幅10VのSIN波』を過電圧として模擬し、入力信号としてマイコン端子へ印加します。
入力電圧に対する出力電圧(マイコン端子電圧)は以下のようになります。
【入出力電圧】
*vin:入力電圧、vout:出力電圧
「-10V~10Vの入力」に対して、「-0.7V~5.7Vの出力」になっていることが分かりますね!
今回の例では、素子特性と入出力値は、以下のように設定しています。
ダイオードの順方向電圧:0.7V
電源電圧:5V
GND電圧:0V
入力電圧:-10V〜10V
以上の条件下では、出力値は以下のような計算で求めることができます。
出力の最大値:電源電圧 + ダイオードの順方向電圧 = 5.7V
出力の最小値:GND電圧 – ダイオードの順方向電圧 = – 0.7V
そのような計算となる理由として、動作原理は以下のようになっています。
・「5.7V」以上が入力されると、電流がダイオードを通して電源の方に流れる。
そうすると、出力は「5.7V」でクランプされる。
・「-0.7V」以下が入力されると、電流がダイオードを通してGNDの方に流れる。
そうすると、出力は「-0.7V」でクランプされる。
・「-0.7V~5.7V」以上が入力されると、電流はどちらのダイオードにも流れない。
そうすると、出力は入力そのままの値となる。
プラスαの電流制限抵抗
ダイオードによるクランプ点の前に『電流制限抵抗を実装する』ことが推奨されます。
過電圧が発生した際に、ダイオードに流れる電流値がダイオードの定格順電流を超えないようにするためです。
定格順電流以上がダイオードに流れてしまうと、ダイオードが破壊されて回路自体も壊れてしまいます。
電流制限抵抗の値を決める例として、以下のような条件下で考えてみましょう。
ダイオードの順方向電圧:0.7V
マイコン電源電圧:5V
ダイオードの定格順電流:300mA
入力過電圧:10V
電流制限抵抗:RΩ
この場合、定格順電流となるような抵抗値は以下のようになります。
抵抗値
=(入力過電圧 – ダイオードの順方向電圧 – マイコン電源電圧)/ダイオードの定格順電流
=(10 – 0.7 – 5)/ 0.3
= 14.3 (Ω)
『抵抗にかかる電位差を、ダイオードの定格電流値で割る』ことで求められるのです。
そのため、これより抵抗値が大きいものを実装して電流を制限しなければなりません。
忘れずに実装しましょう。
アクティブクランプ回路
「ダイオードを2つ使用したクランプ回路」は、過電圧が入力されたら常時クランプします。
それに対して「アクティブクランプ回路」は、『任意のタイミングで過電圧をクランプできる』点が特徴です。
アクティブクランプ回路は、ダイオードの代わりにトランジスタやMOSのスイッチング機能を利用します。
DC-DCコンバータなどで利用されていることが多いです。
シミュレーションソフト『LTspice』
今回記事で登場しているシミュレーションは、LTspiceを使用しています。
フリーソフトであるため、『誰でも無料で利用可能』です。
興味がある方は、下記の書籍を参考にして、ぜひ利用してみて下さい。
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クランプ回路の動作原理・用途まとめ
・ 「クランプ回路」は、マイコンやICを過電圧から保護するために実装される。
・ 「ダイオードを使用したクランプ回路」は、抵抗1つとダイオード2つのみで構成できる。
・ 電流制限抵抗を決める際には、ダイオードの定格順電流を満たすような抵抗値のものを選定する。
・ ダイオードの代わりにトランジスタなどのスイッチング素子を使用することにより、任意のタイミングでクランプする「アクティブクランプ回路」を構成できる。
いかがでしたでしょうか。
『マイコン端子への信号線を2つのダイオードで挟む』という点がポイントでした。
この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
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